「もう一度、高校の勉強をやり直してみたい」と考えたことはありませんか?実は今、キャリアアップや新しい挑戦、あるいは純粋な知的好奇心から、高校の学習内容を学び直す大人が増えています。当時は苦手だった科目も、社会人になった今だからこそ面白さがわかったり、仕事に役立つ知識として新たな価値を見出せたりすることもあるでしょう。
この記事では、大人が高校の学び直しをする目的から、具体的な学習方法、それぞれのメリット・デメリット、そして気になる費用や支援制度まで、わかりやすく解説していきます。自分にはどんな学び方が合っているのか、学び直しによってどんな未来が拓けるのか、この記事を通して一緒に見つけていきましょう。
大人が高校の学び直しをする理由とは?
大人になってから、なぜあえて高校の勉強をやり直したいと思うのでしょうか。その背景には、一人ひとりのキャリアプランやライフステージに応じた、さまざまな目的があります。ここでは、代表的な4つの理由について見ていきましょう。
大学進学や資格取得のため
キャリアチェンジや専門性を高めるために、大学や専門学校への進学を考える社会人は少なくありません。その際、受験資格として高校卒業が求められることがほとんどです。最終学歴が中学校卒業の場合、まずは大学入学資格を得る必要があります。また、特定の国家資格や民間資格の受験条件に「高校卒業」が含まれていることもあります。このように、次のステップに進むための土台として、高校の学び直しが必要となるケースは非常に多いのです。高校の学習範囲は大学で学ぶ専門分野の基礎となるため、学び直しは受験対策だけでなく、入学後の学習をスムーズに進める上でも大いに役立ちます。
仕事でのキャリアアップや転職のため
現在の仕事でより高い成果を出すため、あるいは新しい分野へ転職するために、基礎学力の重要性を再認識する人もいます。 例えば、データ分析の仕事に就きたいと考えたとき、高校数学で学ぶ統計や確率の知識は必須です。 また、海外との取引がある部署へ異動したい場合、英語の基礎を固め直すことが不可欠でしょう。学生時代には「これが何の役に立つんだろう?」と思っていた知識が、社会に出て初めてその重要性に気づくことはよくあります。 高校レベルの知識をしっかりと身につけておくことで、仕事の幅が広がり、キャリアアップや希望する職種への転職において有利に働くことが期待できます。
基礎学力を固め、教養を深めるため
特定の目的があるわけではなく、純粋に「知ること」を楽しみたいという理由で学び直しを始める人も増えています。子どもの頃には興味が持てなかった歴史も、大人になってから学ぶと、現代の国際情勢とのつながりが見えてきて面白く感じられることがあります。 同様に、物理や化学の法則が、身の回りの現象とどう結びついているのかを知ることは、日常をより豊かにしてくれます。
不登校などで十分に学べなかった経験を補うため
様々な理由から高校時代に十分に学ぶ機会がなかった人が、学び残したという気持ちを解消し、自信を取り戻すために学び直しを選択することもあります。当時は勉強に集中できる環境になかったり、学習意欲を持てなかったりしたとしても、大人になった今なら自分のペースで落ち着いて取り組めるかもしれません。学び直しを通して、「自分はやればできる」という自己肯定感を育むことは、今後の人生において大きな力となります。過去の経験を乗り越え、新たな一歩を踏み出すための重要なプロセスとして、高校の学び直しが選ばれています。
高校の学び直し!具体的な学習方法
大人が高校の学び直しをする際には、ライフスタイルや目標に合わせて様々な方法を選べます。ここでは、代表的な5つの学習方法について、それぞれの特徴を詳しくご紹介します。
通信制高校で高卒資格を目指す
最大のメリットは、自分のペースで学習を進められる点です。 仕事や家事と両立しながら高卒資格取得を目指す社会人にとって、非常に柔軟な学習スタイルと言えるでしょう。 近年では、オンラインでの学習サポートが充実している学校も多く、学習面での不安を解消しやすくなっています。 また、同級生には同じように学び直しを目指す社会人や、様々な背景を持つ生徒が在籍しているため、多様な価値観に触れる機会も得られます。
高等学校卒業程度認定試験(高卒認定)の合格を目指す
高等学校卒業程度認定試験(高卒認定)は、高校を卒業した者と同等以上の学力があることを文部科学省が認定する試験です。 この試験に合格すると、大学や専門学校の受験資格が得られます。 高卒資格そのものが得られるわけではないため、最終学歴は「中学卒業」のままですが、履歴書には「高等学校卒業程度認定試験合格」と記載できます。
高卒認定のメリットは、最短期間で大学受験資格を得られる可能性があることです。 高校に3年間在籍する必要がなく、試験に合格すればよいため、自分のペースで集中的に学習を進められます。 学習方法は独学のほか、予備校やユーキャンのような通信講座を利用するのが一般的です。 1科目から受験でき、一度合格した科目は次回以降免除されるため、計画的に合格を目指すことができます。
オンライン教材や学習アプリで手軽に学ぶ
「特定の科目だけを復習したい」「まずは気軽に始めてみたい」という方には、オンライン教材や学習アプリがおすすめです。 例えば、「スタディサプリ」のようなサービスでは、有名講師による分かりやすい映像授業を月額料金で視聴でき、中学レベルの復習から大学受験対策まで幅広くカバーしています。
これらのサービスの利点は、スマートフォンやPCさえあれば、いつでもどこでも学習できる手軽さにあります。 通勤時間や休憩時間などのスキマ時間を有効活用できるため、忙しい社会人でも続けやすいのが魅力です。 英語や数学、漢字など、特定のスキルに特化した無料アプリも数多く存在し、ゲーム感覚で楽しく学習を進めることができます。
社会人向けの塾や予備校を利用する
大学受験を視野に入れている場合や、一人では学習のモチベーションを維持するのが難しいと感じる場合は、社会人向けのコースがある塾や予備校を利用するのも一つの手です。 四谷学院のように、社会人や主婦の受け入れ実績が豊富な予備校では、中学レベルから学び直せるカリキュラムが用意されており、ブランクがあっても安心して学習を始められます。
塾や予備校のメリットは、経験豊富な講師から直接指導を受けられることや、学習計画の相談に乗ってもらえるなど、手厚いサポート体制が整っている点です。 また、同じ目標を持つ仲間と出会えることも、学習を続ける上での大きな励みになるでしょう。最近では、オンラインでの個別指導を行う予備校も増えており、自宅にいながら質の高い指導を受けることも可能です。
独学で自分のペースで進める
費用を抑えたい、完全に自分のペースで学習したいという場合は、独学という選択肢もあります。現在は、書店で大人向けの学び直しを目的とした参考書が数多く販売されています。 例えば、学研の「ひとつひとつわかりやすく」シリーズや、山川出版社の「もういちど読む」シリーズなどは、基礎から丁寧に解説されており、独学に適しています。
独学の最大のメリットは、時間や場所に縛られず、費用も最小限に抑えられる点です。 一方で、学習計画をすべて自分で立て、モチベーションを維持し続ける強い意志が求められるというデメリットもあります。 分からないことがあったときに質問できる相手がいないため、途中で挫折してしまう可能性も考慮しておく必要があります。
【目的別】あなたに合った学び方の選び方
高校の学び直しには様々な方法がありますが、どれが最適かはあなたの目的によって異なります。ここでは、3つの主な目的別に、おすすめの学習方法とその理由を解説します。自分にぴったりの選択をするための参考にしてください。
「高卒資格が欲しい」なら通信制高校がおすすめ
レポート提出と年数回のスクーリングが基本なので、働きながらでも無理なく続けられるのが大きなメリットです。 以前に高校に在籍していた場合は、修得済みの単位を引き継げる場合もあり、3年未満で卒業できる可能性もあります。 また、学校によっては社会人向けのコースを設けていたり、同じように学び直しを目指す仲間がいたりと、学習を続けやすい環境が整っています。
「大学受験の資格が欲しい」なら高卒認定が近道
とにかく早く大学や専門学校の受験資格が欲しい、という場合は、高等学校卒業程度認定試験(高卒認定)の合格を目指すのが最も効率的です。 高校に3年間通う必要がなく、試験に合格すれば大学等の受験資格が得られます。
学習期間を大幅に短縮できる可能性があり、1年以内の合格も十分に狙えます。 学習は独学や予備校、通信講座などを利用して自分のペースで進められます。 ただし、高卒認定はあくまで「高校卒業と同等の学力がある」という認定であり、最終学歴は高校卒業にはならない点に注意が必要です。 進学せずに就職活動をする場合、企業によっては高卒として扱われない可能性もゼロではないことを理解しておく必要があります。
「特定の科目だけ学びたい」ならオンライン教材や塾が最適
「仕事で必要な数学だけ復習したい」「海外旅行のために英語を学び直したい」など、特定の科目や分野に絞って学習したい場合は、オンライン教材や学習アプリ、あるいは社会人向けの塾が最適です。
スタディサプリなどのオンライン教材は、月額制で全科目の授業が見放題のサービスも多く、コストパフォーマンスに優れています。 必要な部分だけをピンポイントで、かつ自分の好きな時間に学べる手軽さが魅力です。 一人で学習するのが不安な場合は、社会人コースのある塾や予備校で、専門の講師から直接指導を受けるとより理解が深まるでしょう。 わからない点をすぐに質問できる環境は、効率的な学習につながります。
学習方法の比較表
それぞれの学習方法の特徴を、以下の表にまとめました。自分の目的と照らし合わせながら、最適な方法を選びましょう。
学習方法 | 主な目的 | 得られるもの | メリット | デメリット |
---|---|---|---|---|
通信制高校 | 高卒資格の取得 | 高校卒業資格 | 自分のペースで学べる、働きながら通える | 卒業までに一定期間が必要、自己管理能力が求められる |
高卒認定試験 | 大学・専門学校の受験 | 受験資格 | 短期間で資格取得が可能、費用を抑えられる | 最終学歴は変わらない、学習のモチベーション維持が大変 |
オンライン教材・アプリ | 特定科目の学習、教養 | 知識・スキル | 手軽に始められる、費用が安い、スキマ時間を活用できる | 体系的な学習には不向きな場合がある、質問がしにくい |
社会人向けの塾・予備校 | 大学受験、苦手克服 | 知識・スキル、学力 | 質の高い指導、学習サポートが手厚い、仲間ができる | 費用が高め、通学が必要な場合がある |
独学 | 特定科目の学習、教養 | 知識・スキル | 費用が最も安い、完全に自分のペースで進められる | 挫折しやすい、質問できる相手がいない |
大人が学び直しで高校の勉強をするメリット・デメリット
大人になってから高校の勉強をやり直すことは、多くのメリットをもたらしますが、一方で注意すべき点もあります。ここでは、学び直しによって得られる具体的なメリットと、事前に考えておきたいデメリットおよびその対策について解説します。
メリット:キャリアの選択肢が広がる
高校の学習内容、特に国語、数学、英語といった基礎科目は、多くの仕事の土台となるスキルです。 例えば、論理的思考力は数学を通して養われ、企画書作成や問題解決に役立ちます。 英語力が身につけば、海外とのコミュニケーションが必要な職務にも挑戦できるでしょう。このように、基礎学力を固め直すことで、これまで選択肢になかった職種や業界への道が拓ける可能性があります。 また、高卒資格や高卒認定を取得することで、学歴が応募条件となる求人にも応募できるようになり、キャリアチェンジの幅が大きく広がります。
メリット:自信がつき、自己肯定感が高まる
学生時代に苦手意識を持っていた科目を克服したり、目標としていた資格を取得したりする経験は、大きな自信につながります。「自分もやればできる」という感覚は、自己肯定感を高め、仕事やプライベートなど、学習以外の面にも良い影響を与えるでしょう。特に、様々な理由で高校を卒業できなかった人が学び直しを経て高卒資格を得た場合、長年のコンプレックスを解消し、前向きな気持ちで新たな一歩を踏み出すきっかけになることも少なくありません。
メリット:生涯学習の楽しさを知る
学生時代には気づかなかった学問の面白さを再発見できるかもしれません。 例えば、歴史上の出来事が現代社会にどう繋がっているのかを理解したり、科学の法則が日常の現象を説明していることに気づいたりする喜びは、大人ならではのものです。 このような経験は、学び続けることの楽しさを教えてくれ、生涯にわたって学習を続けるきっかけとなるでしょう。
デメリットと対策:時間や費用の確保が必要
大人の学び直しにおける最も大きな課題は、時間と費用の確保です。仕事や家事、育児などで忙しい毎日の中で、学習時間を捻出するのは簡単なことではありません。また、通信制高校への入学や塾・予備校の利用には、ある程度の費用がかかります。
【対策】
- 時間の確保: まずは通勤中の電車の中や、寝る前の30分など、スキマ時間を活用することから始めてみましょう。 学習アプリやオンライン教材は、こうした短い時間での学習に適しています。 また、学習計画を立てる際には、無理のない範囲で、少しずつでも毎日続けることを目標にするのが長続きのコツです。
- 費用の確保: 費用を抑えたい場合は、独学や無料の学習アプリから始めるのがおすすめです。通信制高校や高卒認定の講座を利用する際には、後述する公的な支援制度が利用できないか確認してみましょう。学費の負担を大幅に軽減できる可能性があります。
気になる費用と活用できる支援制度
学び直しを始めるにあたって、やはり気になるのが費用です。しかし、国や自治体には、学ぶ意欲のある人をサポートするための様々な支援制度が用意されています。ここでは、主な学習方法ごとにかかる費用の目安と、活用できる可能性のある支援制度について解説します。
通信制高校の学費と就学支援金
通信制高校の学費は、公立か私立か、また選択するコースによって大きく異なります。
- 公立の通信制高校: 年間の学費は3万円〜5万円程度が一般的です。 費用を安く抑えたい方には大きなメリットです。
- 私立の通信制高校: 年間の学費は20万円〜100万円程度と幅広く、サポートの手厚さに比例して高くなる傾向があります。
その他、教科書代や教材費などの授業料以外の費用を支援する「高校生等奨学給付金」(住民税非課税世帯などが対象)や、自治体独自の補助金制度もあります。
高卒認定試験の受験料と学習費用
高卒認定試験自体の費用は、受験する科目数によって決まります。8科目を受験する場合、受験料は8,500円です。
学習費用は、勉強方法によって大きく変わります。
- 独学: 参考書代のみなので、1万円〜3万円程度に抑えることが可能です。
- 予備校・通信講座: 講座内容によりますが、数万円〜数十万円が目安となります。ユーキャンの高卒認定試験講座は、科目別のコースも用意されています。
ひとり親家庭の親または児童が、高卒認定試験合格を目指して講座を受講する場合、「高等学校卒業程度認定試験合格支援事業」を利用できることがあります。 これは、受講費用の⼀部が支給される制度で、お住まいの自治体が実施しているか確認が必要です。
自治体独自の支援制度やハローワークの教育訓練給付制度
お住まいの自治体によっては、社会人の学び直しを支援する独自の補助金制度を設けている場合があります。自治体のウェブサイトや広報誌などで情報を確認してみましょう。
また、雇用保険に一定期間加入している(していた)方が、厚生労働大臣の指定する講座を受講して修了した場合、受講費用の一部がハローワークから支給される「教育訓練給付制度」というものがあります。 この制度は、「一般教育訓練」「特定一般教育訓練」「専門実践教育訓練」の3種類に分かれています。
高卒認定を目指す講座の中にも、この制度の対象となっているものがあります。 自分が対象になるか、どのような講座があるかについては、ハローワークの窓口やウェブサイトで確認することができます。
大人だからこそできる高校の学び直しを始めよう
この記事では、大人が高校の学び直しをする理由から具体的な方法、メリット、費用、支援制度に至るまで、幅広く解説してきました。
大人になってからの学びは、学生時代とは違った視点で物事を捉えられ、知識が実生活や仕事と結びつく面白さを実感できる貴重な機会です。
学び直しのポイント
- 目的を明確にする: 「高卒資格が欲しいのか」「大学受験資格が目標か」「教養を深めたいのか」で最適な方法は変わります。
- 多様な学習方法を知る: 通信制高校、高卒認定、オンライン教材、塾、独学など、自分のライフスタイルに合った選択肢があります。
- 公的支援を活用する: 高等学校等就学支援金や教育訓練給付制度など、費用負担を軽減できる制度があります。
「もう一度勉強してみたい」という気持ちに、遅すぎるということはありません。この記事が、あなたが新しい一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。まずは小さな一歩から、あなただけの学び直しを始めてみませんか。
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